オマーン・スルタン国特命全権大使 インタビュー


 先日、オマーン・スルタン国特命全権大使、ハリッド・ビン・ハシル・アル・ムスラヒ閣下にオマーンの観光産業や日本とオマーンの経済関係についてお話を伺いました。
 はじめにこのような素晴らしい場を設けていただき、お話をしてくださったムスラヒ閣下に心より感謝申し上げます。
 以下にお話していただいた内容を二種類にわけてまとめました。①日本・オマーン関係、オマーンの観光産業  ②日本とオマーンの経済的な関係、オマーンのエネルギー情勢  の二種類です。
 
 
 
① 日本・オマーン関係、オマーンの観光産業
 
Q. 現在の日本とオマーンの関係はどのようなものでしょうか?
A. オマーン・スルタン国と日本の間には400年以上にもわたる友好関係が築かれています。1972年に正式に国交を結んで以来は、政治・経済・エネルギー・テクノロジー・文化・教育など様々な分野で安定した関係にあり、同時にさらに親密になっていく外交関係にあります。
 
Q. 日本とオマーンの間でより良い関係を築くにはどういった活動が求められていますか?
A. 大使館としては、文化・経済・観光そして二国間関係に焦点を当てて、日本人にオマーンを紹介するイベントを様々開催しています。物語「シンドバッドの冒険」は日本でも有名な話ですが、実はオマーンがオリジナルの話なのです。サッカーを通した日本との交流などもあり、文化面でも密接な関係にあることを紹介しています。現在は2020年の東京五輪に備えた活動の一環として、都内の学校にオマーンを紹介する特別なプログラムを計画しています。東京都オリンピックパラリンピック教育プログラムの、世界友達プロジェクトを推進するものです。
 さらに近年少しずつではありますが、オマーンから日本への交換留学生も増えています。さらに増えていけば良いのですが、依然として言語の壁や入学時期の壁が大きいのだと思います。
 
Q. オマーンのおすすめ観光地や観光資源は何ですか?
A. オマーンは5000年以上の歴史と、大変恵まれた地理的環境を持っています。インド洋に面した長い海岸線や、3000m以上の山々が連なる山脈、渓谷や洞窟など豊かな自然に囲まれており、ダイビングやトレッキング、ハイキングなどを楽しむことができます。アラブ諸国としては珍しいことに、オマーン南部ではモンスーンで冬に気温が下がり、雪が降ることもあります。他にはないユニークな気候から、常に世界中の地理学者の関心の的となっています。
 自然が豊かなことから、日本にはない植物などもたくさんあります。自生しているフランキンセンスという木からは乳香がとれ、日本でもお香や香水として利用されます。乳香はナザレのイエスが生まれた時に東方の三博士がイエスに捧げた三つの贈り物の中にも含まれます。それからパパイヤ・ココナッツ・バナナなどの南国植物もなります。古くからなるデーツもオマーンに欠かせない大切な植物です。
 
Q. オマーンへの日本人観光客はどのくらいいますか?
A. オマーンに来る日本人観光客は例年9,000~10,000人いますが、今後もっと日本人にオマーンのことを知ってもらい、より多くの日本人がオマーンを訪れることを願っています。両国の観光産業推進のために、旅行代理店を通してツアーを増やすこと、パートナーシップを組むこと、また日本・オマーン間の直行便を開通させることなどが必要となるでしょう。ベドウィンスタイルを楽しんだり、美しいモスクを見たり、ウミガメの産卵を観察したり、ラクダに乗ったり、とたくさんの魅力があることを日本人に知ってもらいたいですね。
 
 
 
② 日本とオマーンの経済的な関係、オマーンのエネルギー情勢
 
Q. エネルギーをめぐる現在の日本とオマーンの関係はどのようになっていますか?
A. ホルムズ海峡を経由しない安定した輸出を日本にできていることは大変喜ばしいことです。2016年には、日本への原油輸出国上位10位、LNG輸出国9位になりました。貿易自体は1970年代から続いており、民間規模でも発展しています。最近では日本からオマーンへのエネルギー分野の民間投資も活発になってきていますし、JICAによる技術協力・研修事業や国際石油協力センター(JCCP)の事業での協力もあり、様々な形で両国の信頼が深まってきております。
 
Q. 最近発効された、日・オマーン投資協定について教えてください。
A. 2015年に署名された本協定と、2014年に署名された租税協定の二つにより、日本とオマーン間の様々な分野における交易促進を促すフレイムワークが完成しました。投資協定は投資家の権利保護と投資財産設立後の最恵国待遇などにより投資を容易にし、租税協定では税が日本とオマーンで二重にかかることを回避できます。私たちは日本がオマーンの経済発展に、特に製造業・石油化学・食品業・農業・漁業・港湾物流・観光業とおもてなし精神など、様々な分野で協力することを望んでいます。
 
Q. オマーンから日本に特に期待することは何でしょうか?
A. 今後はオマーン国内におけるEV(電気自動車)の普及促進のため、日本の優れた自動車産業からの技術協力を期待します。充電ステーションの設置やランニングコストなどを含んでも安くEVが普及した未来を想定しております。そのため今後国外からの投資の拡大や、競争的なフィールドになることが見込まれるこの分野でぜひ日本と協力がしたいです。それからオマーンと日本は比較的似ている国だと考えています。食文化などはもちろん異なりますが、平和を重んじる姿勢や、人々を歓迎するおもてなし精神など、同じ価値観を両国間で共有されていると思います。自国の固有な文化、アイデンティティを保ちながら国家発展させてきた日本と今オマーンも同じ道を歩もうとしています。そんな日本でよりオマーンの認知度を高め、民間投資をはじめとして経済的にも文化的にもより盛んな交流ができることを望みます。
 
Q. オマーンのポスト石油時代へどのように備えていますか?
A. オマーンは石油輸出や石油化学産業からの収益を国家発展のためのインフラ整備費用や人材育成費用に充てており、ポスト石油時代へ着々と備えています。また他国からの技術の輸入と協力も歓迎し、特に太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの分野で積極的に受け入れています。もちろん日本からのこの分野での投資や技術輸出も歓迎します。一方でオマーンは国策として原子力発電は一切使わないことを決定しています。
 
 
 
③大使からこの記事の読者へメッセージ
  Message From The Ambassador
 
 日本人の皆さん、オマーンは世界で最も平和で安全な国のうちのひとつです。オマーン人はとてもフレンドリーであり、訪れる人を歓迎します。日本人は特にオマーン人から強く歓迎されるでしょう。
 アラブ人の皆さん、日本はオマーンのように豊かな文化と歴史がある美しく安全な国です。人々もまたフレンドリーに歓迎してくれます。オマーン人・アラブ人に日本を訪れ、日本を体感することを強くお勧めします。
 
【原文】
 Oman is one of the most peaceful and safest countries in the world and the Omani people are very friendly and welcoming to visitors, especially from Japan, who they admire very much.
  Japan, like Oman, is also a beautiful and safe country has rich culture and history with friendly and welcoming people, and I strongly recommend to Omani and Arab people to visit it and experience it.
 
 
 
 
以上、東京外国語大学アラビア語専攻の八木瑛子と久保桃歌がインタビューをさせていただきました。
(文責:八木瑛子)

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